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【第10回】「ここに向かって来たんだな」という作品を 『ハイキュー!!』古舘春一先生に聞いてみた
最後に、古舘先生が応募原稿に期待すること、新人作家さんに伝えたいことを語っていただきました！
2021/11/25
では最後になりますが、漫画賞のページらしく…先生が漫画賞で審査員をされていた際に重視していたことや、こういう作品がいいというのはありますか？
「このシーンを描きたかったんだな」というのが伝わる作品がいいですね。ここに向かってきたんだな、という。あとは読みやすい作品。「これって何だっけ？」ってページを戻るものはちょっと。作品に入り込む前にいっぱい説明されると「最後のほう、覚えてない」ってなる(笑)。まあよく言われることですけど。
「説明ナレーションから入るな」とか「専門用語を多くするな」とか、そういう基礎的なことですね。
でもそこを説明しなきゃ始まんないんだよ、ということもありますし。
気持ちはわかるけど、と(笑)。どういう導入だと期待が持てます？
難しい！ 説明から始まらないほうが、いいはいいんですよね…。たとえば、わりとよくあるパターンですけど「終盤の見せ場を最初に」というのはインパクトありますよね、読み切りだと。
クライマックスから始まる演出ですね。
でも導入を何度も直した結果、自分でわけが分からなくなるということもよくあります。何回も「ここいらないな」って捨てていかないと。話もコマ割りも、減らしていくのって凄いキツいし大変ですが血の涙流しながらやってほしい。
プロットやネームになかったものが差し込まれることもあるじゃないですか。僕が覚えているのは、鴎台戦で最後の日向がスパイクを決めるシーンで、ネームになかった「日向が一人で練習しているシーン」がカットインで入っていて。原稿を受け取った時に衝撃を受けて。
そうですね(笑)。その日向のシーンは、一人でバレーボールをしていた時とは違う喜びのピークを表現したかった。それでいうとその日向のここのシーンは影山にとっても、中学時代と違ってトスを上げれる選択肢がこんなにあるという意味合いもあったんだって、Vリーグ編の影山の幼少時代を描きながら気づきましたね(笑)。
漫画の描き方とは違う話になっちゃいましたね(笑)。話を戻すと、先生がよく「ネームに悩んでいる時間の前半で８、９割は出来ている」って仰ってましたよね。
はい。
後半で残りの１、２割をやるって。ほぼ完成してるけど悩んじゃう、という。
話に自信がないので「これでいく！」って思えないんですよね。もうちょっとなんとかなるんじゃないか、っていつまでもウダウダやってる。でも、ネームの段階になると悩んでた箇所の解決策が思いつくことも多いんですよね。
それがわかっていてもプロットから手が離れられないんですね？
ですね～。自分でできてないことを言うのもアレですが、取り敢えず描いてみたら物語が動き出すかも。
漫画賞をめざす若い作家さんに向けて何かメッセージはありますか？
たぶん、1000人の人が1000回言ったと思いますけど、漫画じゃないものも見たほうがいいと思います漫画はいっぱいの人が見てるから、他の、色んなメディアからつまんだほうがいい。
違いを作るってことですね。新人作家さんは同じような漫画を見ているから、そうじゃないところから持ってきたものを使うと、アイデアで差がつけられる。
あと何かバイトするとか。一見漫画関係なくても、インプットが多いに越したことはないし、絶対何かしら他人と違う武器になるはず。でもまあ、言われるまでもないですよね？
それが意外と難しいんです。一方で、もちろんジャンプを目指すなら、ジャンプに載っている作品、大ヒットしてみんなが読んでいる作品はどんなものなのかとかは抑えておいた方がいいですよね。
好き嫌いではなく、リサーチくらいはしたほうがいいでしょうね。
まずはとにかく描き始めていただきたいですね！投稿、ぜひお待ちしています！古舘先生、今日はありがとうございました！
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古舘春一先生 Furudate Haruichi
漫画家。2008年第14回JUMPトレジャー新人漫画賞で『王様キッド』が佳作受賞。2012年〜2020年、週刊少年ジャンプで『ハイキュー!!』連載。
